見てるぞシール

「良心」をうまく使う

結界のタイプ

見立てることで発生する結界

両端の世界と、結界を形作る行為

悪事

個人

自制する

省みる

防犯

地域社会

「良心」をうまく使う

「日本の街を歩いているとなにかと強い視線を感じます、これはなんですか」

日本に住む外国人向けの新聞、Japan Timesに掲載されている、「So What The Heck Is That(なんなんだこれ?)」というお便り企画の一つにあった文章である。ふたをあけると、東京都民にはおなじみ、歌舞伎の隈取りのような「目」のシールである。

正式名称は「動く防犯の目」。2005年に導入が開始された防犯用のシールだそうだ。今ではトラックのうしろから、立て看板に書かれたり、ゴミ収集所に貼ってあったりと、かなりの確率でお目にかかる。石原慎太郎都知事(当時)がデザインに関わったとも。

このステッカーの不思議なところは、「見ているぞ」といった、具体的な行為の宣言はなされているものの、見ているからなんだということは明確に書かれていないところである。しかし直感的に、「悪事」を見ている(から悪いことはするな)ということだとわかる。他人の視線があることを暗示することによって、社会的に良くないとされている行いを自制させるためのステッカーである。

このステッカーの元を考えていくと、一つ思い当たるのが「お天道様」である。「お天道様がみているぞ」と幼少期に言われた人もいるのではないだろうか。人の悪事に対して、他の人間が誰も見ていなくても、太陽はちゃんと見ているのだから、どんなときでも悪事は働かぬべきだと説く語である。お天道様がそのまま太陽を意味することもあれば、神や仏といったものの象徴として扱われることもある。現代におけるその目が降りてきたのがこのステッカーだと言えるかもしれない。

ステッカーを貼ったところで、犯罪そのものを止められるわけではない。もっと言うならば、このステッカーの意味を理解しなければ効果がそもそも発揮されないのである。見ているから悪いことをするなよ、という共通言語のもとでこのステッカーは成り立っているのだ。良心によって成立している結界ともいえる。

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