縄・注連縄

すべてをつなぐ万能ロープ

結界のタイプ

権威や立場を象徴する結界

両端の世界と、結界を形作る行為

日常

先に進まない

象徴する

くぐる

張る

見立てる

神域

役柄

すべてをつなぐ万能ロープ

最も代表的な結界と言っていいだろう。しめ縄に限らず、縄の万能性には度々驚かされることが在る。

この注連縄だが起源は、日本神話にさかのぼる。天岩戸から出てきた天照大神が再び天岩戸へ入ってしまわないよう、「立ち入り禁止」の意味で、神々が岩戸にシリクメ縄を締め塞いだのが始まりとされている。というわけで、注連縄は神と人との領域を示し、邪なものたちが入ってこないようにするための結界でもあった。

現在の神社神道では「社」・神域と現世を隔てる結界の役割を持つ。また神社の周り、あるいは神体を縄で囲い、その中を神域としたり、厄や禍を祓ったりする意味もある。御霊代・依り代として神がここに宿る印ともされる。古神道においては、神域はすなわち常世であり、俗世は現実社会を意味する現世であり、注連縄はこの二つの世界の端境や結界を表し、場所によっては禁足地の印にもなるのだ。

つまり、木に巻けば神木となり、ある一定の区域を囲えば神域となり、門などに掲げれば、神域の入り口として作用する。実に万能かつポテンシャルに満ち溢れた道具なのだ。この万能ロープは物理的障害物ではないから越えようと思えば簡単に超えることができる。その結界に意味があるのは、その背後で心のけじめが期待されているからである。

この心のけじめによってロープを境界を成り立たせているこんなエピソードがある。

日本文化に詳しいある外国人が、信州の小さな温泉町の宿に宿泊した。この宿は小さな町にあるため、湯船は一つしかなかった。5月のゴールデンウィークが過ぎたばかりで、まだ多くのお客さんが宿泊していた。風呂に入ろうと浴室を覗いたところ、男女混浴だった。外国人は驚き、女性が入ってくるのではないかと心配になった。彼は宿の主人に尋ねた。「日本の法律では、浴室は男女別でなければならないのでは?」と。主人は「申し訳ございません」と謝り、「それでは男女別にしましょう」と返答した。主人はすぐに浴室に向かい、中央にロープを張り、右側を女湯、左側を男湯として区切ったのだ。

室を限っているのは壁ではなく、超えてはならないこと、つまりは心のけじめを暗示している一本のロープに過ぎないのである。

縄を竹に渡して囲った聖域や、ロープを渡して区切られた境界は、入ろうと思えば人も、ときには獣も自由に出入りできる。しかしあえて私達が出入りをしないのは、その縄の象徴する意味を知っているから他ならない。

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