関守石

亭主からのささやかなメッセージ

結界のタイプ

見立てることで発生する結界

両端の世界と、結界を形作る行為

先に進まない

自制する

遠慮する

亭主

亭主からのささやかなメッセージ

茶庭や露地の飛び石や延段の岐路を覗くと、時折石が真ん中に据えてあることがある。また場合によっては蕨縄などで十文字に結んであることもある。もともとは茶道の作法のひとつであり、これは関守石、止め石とよばれるもので、「これより先は遠慮下さい」という意を示す暗黙の印である。簡単に言えば「立入禁止」として置かれるわけであるが、茶道では、関守石の先はないものとみなし、関守石が置いていない飛石を歩いて、主人の意図する順路を進んでもらうための道しるべとしての存在にもなる。

しかしこの関守石、この石の置かれた意味を知らざる者の前では全くその立ち入りを遠慮させる効果をもつことはない。この暗示的メッセージを読み取ることができない場合、関守石は単なる石であり、あくまで景観の一部として溶け込んでいくのみである。

逆説的に言えば、約束事、共通の理解のもとで初めて効果を発する境界であるといえる。あくまで景観を阻害せず、また結界に対峙する者の「自発的」な抑制を促すような人の良心に頼ることで作られる結界だ。ここから先に進むことができない看板として石を「見立て」ているのだとも言える。

西洋における石造りの壁と異なるのは、境界に退治する人間の完全なコントロールを目指していないことである。あくまで最終的な行動と判断は人に任せる点こそがこの関守石という結界の大きな特徴なのだ。杉並区の神社、大宮八幡宮の庭師さんは言う、「遠慮してもらう、これこそが一番大事なことだよね、強制じゃないんだ」

空間を物理的に、視覚的に分断させるのではない。結界を媒介として結界を挟んで存在する2つの世界を混じり合わせ、人と自然空間との関係性をより密接に感じさせる装置であると言えるだろう。

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